新規事業は「儲かるか」より「本業から何を奪うか」で判断する
新築の受注環境が厳しくなるなか、リフォーム、不動産仲介、非住宅、賃貸管理など、新規事業のご相談をいただく機会が増えています。その際、社長が必ず口にされるのが「この事業は儲かりますか」という問いです。
大事な問いですが、新規事業の判断では、もっと先に考えるべき問いがあります。「この事業は、本業から何を奪うか」です。
新規事業の失敗は、本業の側で起きる
ある工務店の事例
年間30棟ほどの新築を手がけていた工務店が、リフォーム事業を立ち上げました。市場はあり、OB施主という見込み客もいて、事業計画も悪くありませんでした。
2年後、リフォーム事業は小さな黒字を出していました。ところが本業の新築は24棟に減り、会社全体の利益は新規事業を始める前より減っていたのです。
静かに流れ出ていたもの
- 新築のエース監督が、リフォームの現場も兼務するようになった
- 社長の関心と時間が、新しい事業の立ち上げに向かった
- 営業担当が、手離れのよい小口リフォームを優先するようになった
新規事業の失敗は、多くの場合、新規事業の中ではなく本業の側で、見えない形で起きるのです。
奪われるのは「人・時間・社長の意識」
地域工務店では、新規事業に使える人材が社内に余っていることはまずありません。新しい事業を始めるとは、本業のどこかから人と時間を持ってくることです。
そして最も大きいのが社長の意識です。新しい事業に社長の関心が向かう間に、問い合わせの質の低下、手直しの増加、社員の疲れといった本業の小さな変化に気づくのが遅れてしまいます。
さらに見落とされがちなのが、社員の受け止め方です。社長が新しい事業に熱を上げる姿を見て、本業を支える社員が「うちの仕事は、もう大事ではないのか」と感じれば、その熱量は目に見えない形で下がっていきます。新規事業が奪うのは人と時間だけでなく、本業に向けられていた誇りでもあるのです。
「儲かるか」の前に確かめる3つのこと
1. 誰が担うのかを、名前で決める
「社内で兼務」は危険信号です。本業から誰を、何割の時間抜くのか。その穴を誰が埋めるのかまで、名前で決めます。
2. 社長の時間の上限を決める
新規事業に使う社長の時間を週に何時間までと決め、超えたら専任者を置くか事業を見直します。
3. 本業の「健康診断」の指標を決めておく
受注棟数、粗利率、紹介率、手直し件数など、本業の状態を示す指標を3つほど選び、立ち上げ中は毎月確認します。本業の指標が崩れ始めたら、新規事業のペースを落とします。
新規事業は、本業の余力でやるもの
余力とは、本業の型ができていて、社長がいなくても回る状態のことです。本業に余力がないまま始めた新規事業は、どれほど有望でも会社全体を弱くします。「儲かるか」は事業計画書で答えが出ますが、「本業から何を奪うか」は、自社を冷静に見つめなければ答えが出ません。
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