値引き1%の重さを知っていますか ── 値決めと価格説明の技術
契約の最終局面で、お客様から「あと少しだけ、なんとかなりませんか」と言われる。この場面での値引きを「最後のひと押し」「お客様へのサービス」と考えている方は少なくありません。しかし、その1%が会社の利益にとってどれほど重いかを、数字で確かめたことはあるでしょうか。
値引き1%は、営業利益の3分の1
試算してみる
3,000万円の注文住宅で、粗利率25%、営業利益率3%の工務店を仮定します。
- 粗利は750万円、営業利益は90万円
- 1%(30万円)を値引きすると、値引き分はそのまま利益から消える
- 営業利益は60万円となり、1%の値引きで営業利益の3分の1が失われる
取り戻すには、売上120万円の上乗せが必要
値引きした30万円の利益を取り戻すには、粗利率25%のままなら売上を120万円上乗せしなければなりません。値引きは一瞬ですが、取り戻すのは簡単ではありません。
京セラ創業者の稲盛和夫氏は「値決めは経営である」と語りました。価格は現場の駆け引きではなく、会社の利益構造を決める経営判断です。
値引きが起きる本当の原因
多くの場合、お客様は「高い」と思っているのではなく、「なぜこの価格なのか分からない」と感じています。根拠が分からない価格は、交渉の余地があるように見えるのです。
価格の根拠を説明できなければ、営業担当は値引きで応えるしかなくなります。値引きの問題は、営業の交渉力の問題である前に、価格説明の仕組みがないという会社の問題です。
値引きの見えないコスト
一度値引きに応じると、お客様は「最初の価格は交渉の出発点だった」と受け取ります。その評判は口コミで広がり、次のお客様も値引きを求めるようになります。さらに削られた利益の穴埋めは、多くの場合、現場の原価や職人への支払いに向かいます。値引きは、会社の信用と現場を少しずつ削っていくのです。
価格の根拠を伝える4つの手順
1. 価格の内訳を「お客様の言葉」で説明する
構造・断熱・設備・保証・アフターにそれぞれいくらかかり、それが暮らしにどう返ってくるのかを、専門用語ではなく生活の言葉で説明できるようにします。
2. 「値引き」ではなく「仕様の調整」で応える
予算が合わないときは価格を下げるのではなく、仕様や面積を調整する提案をします。価格の根拠を守りながら、お客様の予算にも寄り添えます。
3. 値引きの権限と上限を決める
営業担当が判断できる範囲を明確にし、超える場合は社長の判断とします。値引きの件数と金額を毎月集計し、傾向を確認します。
4. 自社の強みを、価格の根拠として言語化する
地域での実績、アフター体制、OB施主の声など、価格に含まれる「目に見えない価値」を伝える材料を、会社として揃えておきます。
価格に自信を持てる会社へ
値引きをしない会社は、お客様に冷たい会社ではありません。自社の価格に自信を持ち、その理由を誠実に説明できる会社です。適正な価格で得た利益は、職人への適正な支払い、社員の待遇、アフターの充実、次の世代への投資に回っていきます。値決めを守ることは、お客様と会社の長い関係を守ることでもあります。
値決めと価格説明の仕組みづくりをご支援します
株式会社ソルトでは、原価・粗利構造の分析から、価格説明ツールの整備、値引きルールの設計まで、地域工務店の収益改善をご支援しています。お気軽にご相談ください。