ゼブラ企業という選択 ― 利益と理念は二者択一ではない
地域工務店の経営支援をしていると、こんな悩みを打ち明けられることがあります。「地域のためと言っていたら儲からない。かといって儲けに走れば、地域の信頼を失う」。真面目な経営者ほど、この板挟みに苦しんでいます。
しかし本当の課題は、利益と理念を対立するものと捉える思考の枠組みそのものにあります。
地域工務店は、もともと「ゼブラ企業」である
近年、「ゼブラ企業」という言葉が使われるようになりました。急成長と独り勝ちを目指すユニコーン企業に対して、ゼブラ企業は白と黒の縞、すなわち利益と社会性の両立を志向し、群れで共存する企業像です。
地域の職人と共に家を建て、引き渡した後も何十年と点検で通い続け、OB客の子世代の家づくりまで引き受ける。地域工務店は、もともと「群れで生き、長く続ける」ことを前提にした事業体です。近江商人の三方よしに代表される日本的経営の系譜に、ゼブラ企業という現代の言葉が接続したと言ってもよいでしょう。
つまり、目新しい何かになる必要はありません。自社がすでに持っている性質を自覚し、言語化し、経営の中心に据え直すことが出発点です。
理念経営を実装する3つの手順
1. MI(マインド・アイデンティティ)の言語化
CIというとロゴやデザイン(VI)が先に浮かびますが、出発点はMI、すなわち理念です。「なぜ自分たちはこの地域で家を建てるのか」を、借り物の言葉ではなく社長自身の言葉で書き出します。創業の経緯、忘れられない引き渡しの場面、地域への原体験。そこから生まれた言葉でなければ、社員の心は動きません。
2. 理念を制度に埋め込む
理念は額に入れて掲げるものではなく、日々使うものです。採用面接の質問項目、人事評価の基準、OJTで先輩が新人に語る内容、OFF-JTの研修テーマ。この4つに理念が織り込まれているかを点検してください。「理念に共感する人を採用し、理念に沿った行動を評価する」循環が回り始めたとき、理念は文化になります。
3. 地域との共創を本業の延長で行う
寄付やボランティアだけが地域貢献ではありません。空き家の再生、地元の木を使った家づくり、若い職人の育成など、本業の技術がそのまま地域の課題解決になる領域を選ぶことが大切です。本業から離れた「良いこと」は続きませんが、本業と重なる「良いこと」は収益を生みながら続いていきます。
利益は、理念を続けるための条件
ゼブラ企業は、利益を軽んじる企業ではありません。むしろ逆です。適正な粗利を確保できない会社は、職人の手間賃を守れず、社員の給与を上げられず、結局は地域への責任を果たせなくなります。儲けることと地域に尽くすことは、片方を欠けばもう片方も倒れる関係にあります。
また、言語化された理念は事業承継における最大の引き継ぎ資産でもあります。技術は職人に、顧客は台帳に残せても、「この会社は何のために存在するのか」は、言葉になっていなければ先代の引退と共に消えてしまいます。
白か黒かではなく、白と黒の縞で生きる。その覚悟を言葉にしたとき、採用も商品開発も日々の判断も、一本の筋が通り始めます。
理念経営・ゼブラ企業化のご相談はソルトへ
株式会社ソルトは、地域工務店に特化した経営コンサルティング会社です。理念の言語化から採用・評価制度への落とし込みまで、貴社の理念経営の実装をご支援します。まずはお気軽にご相談ください。