• 2026.08.12(木)-コラム
  • NEW

注文一本足打法からの脱却 ― セミオーダーとハイブリッド化

地域工務店の経営支援をしていると、「うちはフルオーダーの注文住宅しかやらない」という社長に数多くお会いします。一棟一棟に向き合う姿勢は、間違いなく地域工務店の強みです。しかしその一方で、建築費の上昇により、フルオーダーを選べる顧客層は確実に細っています。

課題は商品構造の「一本足打法」

受注は水物です。注文住宅は契約から引き渡しまでの期間が長く、着工の谷が生まれれば、職人の手配も資金繰りも一気に苦しくなります。商品がひとつしかない会社は、この谷を埋める手段を持ちません。

多角化というと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、要は収益の柱を一本から二本、三本にするということです。当社では、次の3つを段階的に組み合わせることをお勧めしています。

事業構造を再設計する3つの打ち手

1. 企画(セミオーダー)住宅の開発

仕様と間取りの選択肢をあらかじめ絞り込み、価格と工期を明示した商品をつくります。設計の自由度を7割程度に抑える代わりに、お客様の「いくらかかるか分からない」という不安を取り除く。打ち合わせ回数が減れば設計・営業の工数も減り、粗利率が安定します。

弊社代表の青木は工務店経営に携わっていた時代、企画住宅を立ち上げて3年で年間8棟・売上2億円の柱に育てた経験があります。フルオーダーでは手が届かなかった若い一次取得者層が、新しい顧客として入ってきたことが成長の要因でした。

2. 分譲と注文のハイブリッド化

土地付きの分譲は「場所」で集客できるため、モデルハウスに頼らない集客装置になります。一方、注文住宅は粗利率と会社の技術力を支えます。分譲で出会い、注文で応える。この両輪が回り始めると、受注の谷は目に見えて浅くなります。

分譲には土地仕入れという財務リスクが伴いますので、自己資本と借入余力を見ながら、年間1〜2区画の小さな規模から始めるのが現実的です。

3. 商圏を絞る「局地戦」に徹する

商品を増やす際にやってはいけないのが、商圏まで一緒に広げてしまうことです。狙うべきはその逆で、施工エリアを絞り込む「密度の経済」です。現場が近ければ監督は1日に何度も巡回でき、職人の移動時間は減り、OB客からの紹介が連鎖します。大手ビルダーとの全面戦争ではなく、選んだエリアの局地戦で勝ち切ることが地域工務店の戦い方です。

進める順番と撤退基準

三つを同時に始める必要はありません。まずは財務リスクの小さい企画住宅から着手し、標準仕様は過去のOB客の間取り・仕様データの「最大公約数」からつくります。企画住宅が柱に育ってから分譲へ。あらかじめ撤退基準(例:2年で年3棟に届かなければ商品を見直す)を決めておくことで、意思決定が軽くなります。

多角化とは「同じ幹から枝を伸ばす」こと

多角化は「何でも屋になること」ではありません。自社の施工力という同じ幹から、顧客層の異なる枝を伸ばすことです。フルオーダーで培った設計力があるからこそ企画住宅の標準仕様に説得力が生まれ、注文で鍛えた現場管理力があるからこそ分譲の原価が締まります。

商品はひとつの完成形ではなく、市場に合わせて編成し直すポートフォリオです。二本の足で立つ安定が、結果として職人と社員の暮らしを守ります。


商品開発・事業多角化のご相談はソルトへ

株式会社ソルトは、地域工務店に特化した経営コンサルティング会社です。セミオーダー住宅の商品企画から分譲×注文のハイブリッド化まで、貴社の規模と財務状況に合わせた事業構造の再設計をご支援します。

お問い合わせはこちら

かかわる全ての人の幸せに貢献する

株式会社ソルト