数字が現場に届かない工務店 ― 「見える化」が収益を変える
地域工務店の経営支援をしていると、決算書を年に一度、税理士から受け取るときにしか見ないという社長にお会いすることが少なくありません。売上3億〜20億円規模の工務店では、社長が営業も現場も資金繰りも一人で抱えていることが多く、数字と向き合う時間はどうしても後回しになりがちです。
それでも会社が回ってきたのは、社長の勘と経験が優れていたからです。しかし、資材価格の高騰と新築着工の減少が同時に進む今、勘と経験だけでは利益を守ることが難しくなっています。
課題は「数字が現場に届いていない」こと
見積時には確保できていたはずの粗利が、引き渡してみると「思ったより残らなかった」。この現象が常態化している工務店は少なくありません。
問題は「どんぶり勘定」そのものではなく、数字が社長の中だけに閉じていることです。現場監督は担当物件の予算と実績を知らず、営業は値引きが粗利に与える影響を知らない。数字が共有されていないから、判断も社長にしかできない。これは収益の問題であると同時に、経営の属人化の問題でもあります。
たとえば売上10億円の会社で粗利率が2ポイント違えば、年間2,000万円の利益差になります。この差の多くは、特別な営業努力ではなく、原価と工程の管理精度から生まれます。
見える化は3段階で進める
1. 物件別粗利の見える化
実行予算と実績原価を物件ごとに突き合わせ、月次で更新します。全社の粗利率という「平均値」ではなく、物件ごとの「ばらつき」を見ることが重要です。赤字物件がどこで生まれているかが分かれば、打ち手は自然に絞られてきます。
2. 工程の見える化
工期のばらつきは、そのまま原価のばらつきです。着工から引き渡しまでの標準工期を決め、遅れを週次で全員が見える場所に共有します。高価なシステムは必要ありません。まずは一枚の工程一覧表から始められます。
3. 会議の見える化
感想と精神論で始まる会議を、数字で始まる会議に変えます。KPIは粗利率・契約棟数・工期の3つで十分です。指標が多すぎる会議は、指標がない会議と同じくらい機能しません。
導入はExcelから、精度より継続を
高機能な基幹システムから入る必要はありません。最初はExcelの一覧表で十分です。大切なのは精度よりも継続で、初月は6割の精度でも構いません。経理担当と現場監督が「同じ表」を毎月見る場、つまり月1回の原価会議を定例化することが先です。仕組みが回り始めてから、クラウドツールへの載せ替えを検討しましょう。
見える化は権限移譲の前提条件
見える化は「管理の強化」ではなく、「権限移譲の前提条件」です。数字を共有されていない社員に「自分で考えてほしい」と求めるのは酷なことです。逆に、自分の物件の予算と実績を毎月見ている現場監督は、指示されなくても原価を意識し始めます。物件別の原価データは、OJTの教材としても非常に優れています。
社長の勘は、長年の数字の蓄積が無意識化したものです。それを意識的に取り出し、仕組みに変えることはできます。見える化とは、社長の頭の中を会社の共有財産に変えること。収益改善の手段であると同時に、次の世代へ会社をつなぐ準備でもあるのです。
収益改善・見える化のご相談はソルトへ
株式会社ソルトは、地域工務店に特化した経営コンサルティング会社です。物件別粗利管理の仕組みづくりから会議体の再設計まで、貴社の状況に合わせてご支援します。まずはお気軽にご相談ください。