決算書に載らない資産が、会社の値段を決める ── 「見えざる資産」入門
「うちの会社には、どれくらいの価値があるのでしょうか」。地域工務店の経営支援をしていると、社長からこうしたご質問をいただくことがあります。
多くの社長は、その答えが決算書の中にあるとお考えです。もちろん売上・利益・純資産は大事な物差しです。しかし、私自身が会社を第三者に譲渡した経験から言えば、会社の値段を大きく左右するのは、決算書に載っていないものです。
同じ決算書でも、値段は違う
売上10億円、営業利益5,000万円という、同じ決算書を持つ工務店が2社あると仮定します。
- A社:受注の大半を社長の人脈と営業力に頼り、現場は一人のベテラン監督が仕切っている。社長が倒れたら明日から回らない。
- B社:OB施主からの紹介が安定して続き、見積りから引渡しまでの仕事に型がある。若手が育ち、社長が1か月不在でも回る。
買い手が高い値段をつけるのはB社です。「この利益が来年も再来年も続くか」が、まったく違うからです。この差を生んでいるものを、私は見えざる資産と呼んでいます。
工務店の見えざる資産 ── 6つの要素
1. 人材
知識や技術が特定の人に閉じず、次の世代に受け継がれているか。
2. 仕組み
見積り・工程・品質・アフターに、誰がやっても一定の成果が出る型があるか。
3. 人脈
協力業者、金融機関、不動産業者、地域との関係が、社長個人ではなく会社に紐づいているか。
4. OB施主
引渡し後も関係が続き、紹介やリフォームにつながっているか。
5. 組織風土
社員が意見を言い、失敗を報告できる空気があるか。
6. 理念
会社の存在理由が言葉になり、判断の基準として使われているか。
見えざる負債にも目を向ける
離職が続く、一部の社員に仕事が集中している、会議で誰も意見を言わない、社長の目標が現場に翻訳されていない。これらは見えざる負債です。決算書には一行も載りませんが、確実に会社の値段を下げています。
見えざる負債は、利益が出ている時期ほど見過ごされがちです。表面化するのは市場が冷えたときや、社長が引き継ぎを考え始めたときであり、そのときに慌てても風土や人材はすぐには立て直せません。
現在連載中の「工務店経営の勘違い」では、この見えざる負債がどこから生まれるのかを、私自身の失敗を通じてお伝えしています。
自社の見えざる資産を棚卸しする3つの手順
- 6つの要素を、社長が5段階で自己評価する ── まずは直感で構いません。
- 同じ評価を幹部にもしてもらう ── 社長と幹部の評価がずれている項目に、見えざる負債が潜んでいます。
- 最も低い項目から、1年で1つだけ手をつける ── 見えざる資産は短期間では積み上がりません。毎年1つずつ確実に積み上げます。
決算書は過去の結果を示し、見えざる資産は未来の利益を示します。会社の値段を上げたいとお考えなら、まず決算書に載らないものに目を向けてみてください。
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