• 2024.07.26(木)-コラム

高性能住宅は基本。+ライフスタイル型

住宅業界は材料高・人手不足に金利上昇など多くの懸念材料があります。コストアップへの心配がある一方で住宅性能の強化にかなりのウェイトが置かれています。住宅性能表示制度からの性能評価に始まり、特に断熱性・耐震性における議論が活発になされており、年間に建つ住宅の30%は住宅性能評価(設計性能評価)がなされる時代になりました(下記国土交通省HPより抜粋)。私は建築士ではありませんが、地域工務店向け経営コンサルタントとして、また住宅業界に長く身を置くものとして耐震等級3・UA値最低0.46を最低スペックとするように、また建設性能評価までの取得をお薦めしています。

考えると住宅業界では何年かの周期で住宅性能に関するブームのようなものが起こっているのですが、これは住まいに関わる生活水準の向上に必要なことだと考えています。そもそも、昔から日本の住宅は断熱性能が低いと言われていました。過去には高断熱高気密住宅は魔法瓶のようであり、高温多湿で四季のある日本においては良くないという意見もありました。これはそもそも施工業者側の知識不足や住宅施工ノウハウの問題、そしてサッシや断熱材を中心とした建材費が上がると住宅価格が高額化しすぎる懸念があったのだと思います。

1996年の163万戸をピークに、国内住宅着工棟数は減少の一途をたどり、この28年でおよそ半減しました。このなかで住宅会社各社は付加価値を高める動きに出ました。棟数が減るので単価を上げようという流れになったのです。このなかで注目されたのが住宅性能の向上です。この流れはある意味必然なのかも知れません。家のなかの温度差が原因で心筋梗塞などを起こすヒートショックの死者数は年間17,000人とも19,000人とも言われます。これに対して2021年の交通事故死者数は2,636人。家のなかで亡くなられる方が交通事故のおよそ7倍にもなっており、これは住宅の断熱性能が低い(良くない)ことが問題であると言われています。また、1995年以降阪神淡路大震災・東日本大震災・熊本地震などの大地震が続き、今後大きな地震が予想されている日本において耐震性能確保は必須になっています。

高性能住宅は災害時などにも強い、いわゆるレジリエンス性の高い住宅です。これから家造りをされる方へはローコスト住宅ではなく性能・素材・デザイン・間取りなどを重視したハイスペックな家造りをお薦めしていますリフォームの相談がある場合も断熱リフォーム・耐震リフォームなどの性能向上リフォームをお薦めしています。

しかし、私は住宅性能の向上だけでは充分な家づくりだとは思えません。人が住むのですから、住む人のライフスタイルを反映した家造りが必要だと思います。住宅性能を重視している住宅会社や設計事務所であってもデザインが良くなかったり住む人ことを考えた間取りではないケースを散見します。例えば住宅性能を訴求するエンジニア的な設計事務所はデザイン性を重視していない(していると思っていても格好悪い)こともありますので、デザインと性能を両立できるセンスのある設計事務所・住宅会社であることをお薦めします。別の観点から、当然アフターメンテナンスについてもしっかりとした体制をとる必要があるでしょう。つまり、性能は住宅そのものに求められる基本スペック(必要条件)であるだけで、十分ではありません。当然性能設計だけでは足りずそれを長持ちさせるような対応が出来る住宅会社の施工&アフターメンテナンス体制が求められるのです。

住宅性能はライフスタイルを実現するための土台のようなものであり、そのうえに住む人の生き様(=ライフスタイル)を乗せていくことが良い家づくりにつながると考えます。工務店経営者がどのような家づくりを提案するか、「どのような人生を提案するか」を意味します。『誰に・どんな家を・どのように』作るのかをより明確にしたうえで、性能は当り前の時代を作っていく責任があると思います。

 

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