• 2025.06.09(木)-コラム
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地域工務店「3つのあるある」──気づけば成長の芽を摘んでいませんか?

地域工務店の多くはその土地に根ざし家づくりを通して人々の暮らしを支えるなかで醸成された文化や価値観があります。しかし、そこには「思考停止を招くクセ」や「成長の芽を摘んでしまう言い訳」も潜んでいます。

本コラムでは、全国の工務店支援を通じて私たちが耳にしてきた“あるある”を3つご紹介しながら、今の時代に必要なヒントをお伝えします。もしかすると御社にも思い当たる節があるかもしれません。


あるある①:「昔やってたね」で止まっている取り組み

― やめた理由は「面倒」だっただけかもしれない

地域工務店にヒアリングをしていると、必ず出てくるのがこのフレーズ。

「あぁ、それ昔やってたね。最近はやってないけど」

たとえば、OB施主向けの手書きニュースレター、定期点検時のちょっとしたギフト、構造見学会の開催、現場日記の更新…。どれも一度は力を入れて取り組んでいたはずの施策です。やめた理由をたずねると、「忙しくて手が回らなくなった」「人が辞めてしまってできなくなった」「新しい取り組みを始めたから」といった声が返ってきます。

しかし、その本質を掘り下げると「工数がかかって面倒だった」「数字に直結している実感がなかった」といった“感覚的理由”に集約されるケースが少なくありません。

一方で、その施策がファンづくりやブランディング、紹介案件の種まきになっていたことに気づいていないことも多いのです。やめた後、じわじわとOBからの紹介が減り、再び広告費が膨らんでいく流れに戻っている会社も散見されます。

見直すべきは「効率化」ではなく「価値化」です。過去の取り組みをリストアップし、当時のお客様の反応や効果を再評価してみてください。それが今の戦い方にアップデートできるかもしれません。


あるある②:「うちの営業エリアは平均年収が低い」という呪文

― 「だから売れない」は、マーケティングの放棄なのかも

「この辺は年収が低いから、高価格帯は売れないよ」

地域工務店の社長さんからよく聞く言葉にこういった趣旨の発言があります。一見、地域性に即した冷静な判断のように聞こえますが、これはマーケティング視点で見ると大きな落とし穴です。

まず、平均年収が御社のターゲット顧客層かというか。たとえば、平均年収が400万円だとしても、600万円以上の世帯が20%以上存在するエリアも多くあります。問題は、「その人たちが誰で、どこに住んでいて、どんな価値観を持ち、何を望んでいるか」を分析することにあります。

さらに言えば、高価格帯の商品を提供する会社がそのエリアに存在しないから、その層が近隣の他エリアや大手に流出している可能性もあるのです。

マーケティングの本質は「誰に、何を、どう伝えるか」を設計すること。「この地域は無理だ」と言い切る前に、エリア内のボリュームゾーン分析やライフスタイル別セグメンテーションなどの基本的なマーケティング調査をやってみましょう。

「ターゲットがいない」のではなく、もしかすると「見ようとしていない」「探していない」だけかもしれません。


あるある③:「これはうちの家づくりじゃない」でチャンスを逃す

― こだわりが、時に“拒絶”になっている危険性

設計や性能、素材に強いこだわりを持つ地域工務店にとって、「うちの家づくりの美学」は誇りであり、差別化の軸でもあります。

しかし、それが次のような言葉につながっていませんか?

「その要望はうちの家づくりには合わないんだよね」

「ローコストっぽくなるからうちはやらない」

「建築条件付き土地?うちはやらないよ」

もちろん、理念を貫く姿勢は大切です。ただし、それが「お客様の選択肢を狭めている」「スタッフが現場で頭ごなしに断る理由になっている」ようであれば、注意が必要です。

とくに昨今は家に対する考え方が多様化しており、「100%理想通り」よりも「70%満足で手が届く」を選ぶ人も増えています。

あえて問います。「これはうちの家づくりではない」と切り捨てた提案の中に、市場との接点や未来の布石が含まれていたことはありませんか?

譲れない軸を明確にしながら、選択的許容の幅を広げることで、商談数も受注率も変わってくるはずです。


まとめ:「あるある」に潜む“伸び代”に気づこう

今回ご紹介した3つの“あるある”は、すべて成長のチャンスの裏返しです。

あるある 見直しの視点
昔やってたね 過去の施策の“価値化”と再設計
地域は年収が低い 潜在ターゲットの見える化と再定義
これはうちの家づくりじゃない コンセプトの柔軟化と選択肢の拡張

変化の激しい時代において、過去の常識や感覚は必ずしも正解ではありません。むしろ、それにしがみつくことこそがリスクになり得るのです。これらの「あるある」に気づいた瞬間が、次の成長への入口です。小さな見直しが、想像以上の成果を生むこともあります。あなたの工務店の“あるある”は、まだ見過ごされたままになっていませんか?

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