• 2024.07.25(木)-コラム

スキルと理念共感の両立

地域工務店アドバイザーという仕事をしていると、年代別の人員構成がひょうたん型になっているケースをよく見かけます。40代中盤から50代の社員と20代、という30代が極端に少ないという構成です。ベテラン組は一定のスキルがあるもののどうしても体力は衰え始め行動力が落ちます。逆に20代は体力はあるがスキルが伴っていないケースが多く見られます。労働時間の制約が厳しくなっているなかで、仕事も限定されてスキルアップの機会を失っているケースも散見され、スキル以上の難しい仕事を任せられても、教えることのできる人がおらず、一種の閉塞感を感じることもあります。となると、スキルのある社員を採用することも考えるべきですが、他の住宅メーカーや工務店からの転職組は前職での癖がついている場合が多いので、新卒または異業種からの転職を望む経営者の声も多く聞かれます。

課題は『スキルと理念共感の両立』だと感じます。スキルはあるけれども、会社の理念に共感がない社員はバランスを崩しやすく、成果が上がっても上がらなくても会社と自分の考えが違うので、スタンドプレーでチームワークが乱れがちになります。逆に理念には共感しているのですが、スキルが未熟な社員は成果を出すまでに時間がかかってしまい(注文住宅事業の場合は最低2~3年は必要)、相応の教育と経験が必要です。理念に対する共感は採用時点でチェックする必要がありますが、人不足のなかスキルのある社員が理念に共感して入社する難易度は高く、結局スキルアップには時間がかかるということになります。さらに人材の流動性は高まっているので教育を施しても転職してしまうというリスクもあるのです。

では、この難題をどう解決すればよいでしょうか。

結論からすると、特に魔法のようなものはなく理念に共感してくれる社員を採用し、スキルアップのための適切な機会を設けるということになります。これには会社側からすると理念の明確化、採用&教育システムを構築する、商品を磨く、などやる事が多くあります。つまり会社全体の存在意義を明確にし(CI:コーポレートアイデンティティ)ブランディングを図る(MI:マインドアイデンティティ・VI:ヴィジュアルアイデンティティ・BI:ビヘイビアアイデンティティ)ことが大切になるでしょう。確かに、特に中小企業では採用コストをかけることもスキルアップの仕組みを持つことも難しいです。ましてやCI戦略を推進するにはもっとお金がかかります。

確かにお金はかかりますが、衰退産業である住宅業界では、いかに早くこれらの仕組みを整えるかで今後の勝敗が決まるのではないでしょうか。コロナ禍においてはデジタルマーケティングを推進していないと、どんなにいい家造りをしていても、お客様の認知度は低いままとなりますが、逆にデジタルマーケティングをしっかりしていても、中身のない工務店は見透かされてしまいます。CI戦略を一気に再構築し、同時進行で人材の採用・育成(できれば評価・報酬・配置といった人材マネジメント領域全体)の整備とデジタルマーケティングを推進していく、ということが必要になるでしょう。全体を整備するには小規模であっても、一千万円単位で費用がかかる場合もありますが、これらをやり遂げる必要性は大いにあると言えるでしょう。

話を元に戻しましょう。理念に共感した社員を育成するためには、社内での育成スケジュールをつくる必要があります。OJTとOFF-JTの時間を明確化し、いつまでにどの程度のスキルを身に付けるのかというロードマップを作り、またそのマニュアルを構築することが必要となります。社内だけでの構築が難しい場合は、社外の力を使って進めることも必要です。新卒採用の場合、営業職であれば、3年で6~8棟2億円の受注と宅建の取得を目標とすること。設計職であれば、プランのプレゼンテーションができるようになり、一人で詳細図面をかけるようになることに加え、二級建築士の取得を目標にすること。現場監督であれば一人で年間5棟程度の現場管理が可能になることと、二級建築士または施工管理技士の取得が一つの目標となるでしょう。3年でこれらをクリアするためにどうするかを1ヶ月ごとにチェックしていく、というシステムをつくることが必須です。社内の基幹システム仕様やスケジューリングに加え、社会人としての一般的な礼節を身に付けるのは当然のことです。

地域工務店は取り扱っているモノ(家造り)がお客様にとって一世一代の大事業であるので、失敗が許されないシリアスな事業であり、かつ一品料理に近い家造りには、高いスキルと人間性が求められます。だからこそ土台から作り上げていくことが求められるのです。

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