• 2024.06.22(木)-コラム

地域工務店に必要な4つの要素

およそ20年間の地域工務店の経営経験、さらに5年間の地域工務店特化型経営コンサルタントとしての経験を通じて、あらためて地域工務店には下記4つの要素が必要だと考えています。

1.独自性(オリジナリティ)

どんな業界でも独自性(または差別化要因)は必要です。しっかりした経営が出来ている企業で何となく成り立っているケースはありません。ただ、地域工務店は独自化のネタが出尽くしている感は否めませんし、独自性だと思っていても模倣困難性が低いケースが多いのが実情です。このようななかで自社の独自性を高めていく方法としては、(たとえ模倣困難性が低くても)複数の独自性を重ね合わせるパターン(『高性能+デザイン+自然素材』など)や、当たり前のことを超徹底する(アフターメンテナンスサービスの徹底)などがあります。今や高性能は当り前、ホームページで伝えている事と現実にギャップがあったり素材やデザインがちょっと変だとすぐに候補から外れる時代です。マーケティングによる独自化戦略とヒトモノコトに一貫性を持たせたブランディング(BI/VI/MI)も大変重要ですね。

2.収益性(プロフィッタビリティ)

中長期的な健全経営の観点から、地域工務店は最低粗利率30%・営業利益率7%の確保が必須です。注文住宅で15%~20%程度の粗利率では、10年を目安としたアフターメンテナンスまで考えると確実に営業利益マイナスでしょう。たとえ1棟当たりの単価が3,000万円以上(いまや中価格帯ですが)であったとしても、それは同じです。5,000万円を超える高額物件になると相応の対応やスキルを求められ、営業利益はかえってマイナスになるケースもあります。私のアドバイザー先では粗利率40%を実現している地域工務店があります。もちろんサプライチェーンを垂直統合するなど工夫をしておられますが、これから注文住宅は対応力とスキルで35~40%、コンセプト住宅(企画住宅)の場合は25~30%の粗利確保という高付加価値化(高額化ではない)に進む必要がると考えています。

3.持続可能性(サスティナビリティ)

前述のとおり、収益性の確保によって持続可能性高まります。特に地域工務店は地域に根差した企業として公共性も高く、対象となる一般顧客のために成長性よりも経営の継続性が求められます。自宅の建設をお願いした工務店が成長することは、OB施主にとってはどちらでも良いことかも知れません。大きくなって嬉しいという感情は沸くかも知れませんが、それよりも安心してアフターメンテナンスを任せられるか、災害時には駆け付けてくれるか、いつまでもコミュニケーションを取ってくれるかなどが重視されると思います。そういった意味で、財務の健全性はもちろん人材の確保育成や企業としての地域貢献など目には見えない資産(信頼/信用やノウハウ/スキル)の維持向上が持続可能性を高めると言えます。人口減少社会の中で、堅実に理念と技術を承継していく体制づくりこそ地域工務店の価値に繋がります。

4.地域性(ローカリティ)

地域工務店は地域で生きてこそです。大々的にエリア進出をして、地域工務店が全国規模になった例は数えるほどしかありません。健全な野心をもって成長することは良いことだと思いますが、一方で地域を絞って密度の高い経済性を活かし地域のお客様を幸せにするという仕事も大変意義深いと思います。とかく工務店経営者は棟数や売上高を指標に規模の大小で評価しがちですが、ここ最近、お会いした地域工務店のなかには年間10~20棟の完工棟数であっても地域で非常に評価が高く、高い収益性も残しながら堅実に経営をされている企業もありました。その方法論としては地域に特化して高性能住宅・地域の気候風土に適した間取りやデザイン・地域の自然素材の活用・アフターメンテナンスの充実などがあると考えます。(1~4の実践)。

これら4要素の実践こそ地域密着・地域愛着であり、地域工務店の道だと考えます。

 

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