中高級セミオーダー住宅によるハイブリッド工務店化のススメ
円安・原油高・人件費アップなどから住宅価格がどんどん上がっています。光熱費の高騰など、家計を圧迫するような事態も起こっています。安心快適な生活を確保するには、高い住宅性能による快適な家づくり・ランニングコストを考えた家づくりが求められる時代になったと言えます。耐震性能や断熱性能が高い家づくりは素材に収縮や狂いが少なく、住む人にとっても寒暖のストレスがないこと・お得なランニングコストも実感できることから住み始めてからの満足度も高く、結果的に、アフターメンテナンス面でも顧客・工務店双方にメリットがあるようです。このような観点からも、工務店さんには耐震等級3・断熱等級6を必須としてZEHやLCCM住宅に取り組まれる事をお薦めしています。
良い家づくりとは、必ずしも注文住宅を建てることではない。
そんななかで、家造りの再現性を高め品質向上を図るセミオーダー型住宅の開発を推奨しています。注文住宅こそが良い家づくりであり、セミオーダー住宅は安く売ろうとする売り手側の論理で成り立っている、と考えるのは少し違ってきているのだと思います。私は地域の中小工務店は、一定の経営資源のなかで地域に根差した企業活動をすることが使命であると考えています。このような理念を共有できる方こそ、セミオーダー住宅を磨いて家造りの再現性を高める(=自社の商品力を高める)ことがとても重要になってくると思っています。
セミオーダー住宅をつくるにあたってのポイントは下記です。
1.高性能+デザイン+自然素材のポイントを押さえる。
➡高性能は当たり前。デザインテイストは自社のポジショニングを考えて決定。自然素材の活用(出来れば杉やヒノキだけでなく広葉樹も入れる)
2.コストを抑えシンプルに建てる。
➡出隅・入隅をなくし出来るだけ四角いフォルムのなかで、窓の形などによって外観デザインを工夫するなど、作業効率なども考えた内観外観のデザインを心掛ける。
3.使いやすい間取り+自社オリジナルのコンセプトを入れる。
➡廊下を極力なくし小さく建てて広く住めるよう工夫する。内土間やファミリークローゼットなど自社オリジナルのコンセプトを入れる。
4.『定額制』などで価格を明瞭にする。
➡HP上で仕様仕上げを明記し価格を分かりやすくする。オンライン見積りも検討。
5.注文住宅とほぼ同じ仕様仕上げを使う。
➡間違いが起こらないように仕様仕上げは社内で2パターン程度に極力統一する。同時によく出るオプションについて予めまとめておく。
セミオーダー住宅の商品力を磨く
上記に示した程度の性能やポイントを考慮し、性能評価を行ったり太陽光パネルを標準化するなどで住宅の価値を上げ、イニシャルコストをランニングコストで賄う仕組みを提案していけば、環境にも家計にも優しく長持ちする家づくりをより具体的に示すことが出来ます。セミオーダー住宅を2,200〜2,500万円前後で販売できるように、主に設計によるコストダウンと合理化を図っていく事ができれば成功に近づきます。
2019年以前まで平均販売単価2,500~2,800万円・平均坪単価80万円前後がターゲットだった工務店さんは、現在それぞれ3,000万円・100万円前後になっておられるでしょう。この価格帯のケースですと、セミオーダー住宅は比較的スムーズに導入しやすいと考えています。これよりも安いローコスト注文住宅、例えば1,500〜2,000万円の価格帯で家造りをしてこられた工務店さんは、今後ローコスト路線での展開は厳しくなると考えています。理由は、お客様の注文住宅に対する要望の高まりへのスキルや対応力の問題、ローコストでのブランドイメージをどう上げていくのか問題などが挙げられます。満足度の高い世界に一つの家づくりは相応の技術力があってこそであり、それには相応のコストがかかります。顧客の要望を実現しようとしても原価が高騰しているなかでは、工務店の利益率が削がれる形に陥りやすいのではないでしょうか。対応策としては、やはりセミオーダーの商品力を磨くことだと思っています。セールスステップを明確化し、ブランディングを進めることが収益性を高めることに繋がります。
エリア限定ハイブリッド工務店化計画
コンセプトハウスを開発したあかつきには是非、注文住宅と分譲住宅の両方で推進されると良いと思います(これをハイブリッド化と呼んでいます)。この形を進めると受注と工程の平準化という観点から経営を安定化させることが出来るでしょう。さらに不動産事業を展開して住宅不動産の総合化を図ることで、事業の幅が広がってくると思います。ただし、企業としてのブランドアップとコンセプトハウスの品質を高めることが絶対条件となります。無論そのためには経営者の総合的な判断とやり遂げるという信念が必要です。売るためだけの家では見透かされますので、しっかりとしたコンセプトのもとに家造りを考えるようにされると良いでしょう。